樹の声を伝える樹木医

樹が生きることは人が生きること

写真:後藤瑞穂 / 樹木医

人間には寿命がありますが、樹木には正確な寿命がないそうです。
環境が整っていれば、生き続けることが可能なものもあるといいます。大半は気候や寄生虫、菌などが原因で枯れてしまったり、人間の都合で切り倒されたりすることで命を終えますが寿命ではありません。樹木が生き続けられる環境、それこそ人間が生きる理想の環境であるはず。病気になって弱った人を医師が見るように、何らかの理由があって傷んだり弱ったりしている樹木を、絶える前に救うことができるのではないか、助けられるのではないか。そんな信念を持ち、樹の診断や治療する職業が樹木医です。
熊本県で初の女性樹木医となった後藤瑞穂さんもその1人。救える樹を1本でも多く増やし治療などを施すことが人間の環境を守ること、さらに自然と人間の新しい関係を模索し提案することこそ、自分ができること。そのために樹木医という職業をもっと多くの人に知ってもらう、樹の声なき声と出合うためには、まず人に伝えることから。
そんな後藤さんの“伝える”活動をカシオのプロジェクターが支えています。

写真:後藤瑞穂 / 樹木医
写真:後藤瑞穂 / 樹木医

樹木医という仕事

自然あふれる熊本県で育った後藤さん。造園業を営む父から「人間は樹がないと生きていけないんだ。樹から酸素をもらっているんだ」と言われて育ちました。祖母が無医村の医師だったことから、いつしか自分も人や動物を救う仕事ができればと、医者か獣医になりたいと思うように。そんな中、ヨーロッパを訪ねた父親から「自然と文化を組み合わせながら、周辺の景観との調和に配慮された公園などの話を聞き、ランドスケープデザインの素晴らしさに興味を持ったんです。自然と人間を融合させた両方に優しいデザインの実現に興味を持って、医療ではなく造園建設会社に入社したんです」。ハウステンボスの建設事業にも携わるなど、着々と仕事をしていく中「自然への理解を深めるにつれ、樹そのものを知りたいと言う気持ちが強くなっていきました」。そして平成13年に熊本県初の女性樹木医に。不思議な縁で、祖母の職業であった医師、造園業の父親の職業両方を融合させた仕事に就くことになりました。

写真:後藤瑞穂 / 樹木医

木槌で叩いて音を聞いたり、針を刺したりして確認するのが一般的であった幹の空洞調査に、人間でいうCTスキャナーのように、より正確で樹を傷つけることのないピカス診断を日本で最初に導入するなど精力的に取り組む後藤さん。けれど、まだまだ人に知られていない樹木医という職業。加えて適切な診断や治療をすれば樹は蘇ることが可能と言うことを知っている人も少ない現状。救える樹と1本でも出合うチャンスを作るため、まず伝えることから始めなくてはいけない。後藤さんはブログやSNSなどで自ら発信を始めました。「治療の取り組みや樹木への思いを綴るうち、自分たちにとって大切な樹木を救ってほしい、という強い思いを持つ人たちの依頼がくるようになりました」。伝えることの手応えを感じた後藤さんは、自然との共存がより必要と感じた東京へ拠点を移し、個人から公共まで依頼があれば樹を助けに全国を飛び回るようになりました。

写真:後藤瑞穂 / 樹木医

樹の声がちゃんと伝われば人と新しい関係が築ける

「免疫が落ちてくると病気になってしまう人間と同じで、樹も弱ってくると害虫につかれるなど、病気になりやすくなってしまう。樹が元気を無くしてしまう原因の多くは人間にあるんです」と後藤さん。栄養分を吸収する土が少なく、アスファルトで覆われた中に立つ樹がその一つで、関東圏ではよく見る風景。本来はアスファルトを剥がすのが一番だが、それを認めてくれるところはなかなか少ないのが現実。樹木より人間の利便性と安全性を優先しているからです。そこに住む人々と樹の環境、周りの状況全てのバランスを取るのは難しいことですが、樹木医でありながらランドスケープデザインもできるのが後藤さんの強み。美しい並木道を維持するために、樹を診断、治療をし、朽ちて倒れてしまう可能性のある樹は歩行者の安全のために植え替えるなど、樹が今ある場所で人と生き続けていくため、新たに環境をまるごとデザインして提案するのが後藤さんならではの方法です。

写真:後藤瑞穂 / 樹木医

千葉県のある神社で依頼を受けた時のこと。樹齢200~300年のクスノキは葉が少なく変色し、見るからに元気が無くなっていました。神社のシンボルでもあった樹は地元の人に愛されていることを知った後藤さん。「そんなに愛されている樹なら皆で治していこうと、地元の人と一緒に手入れや土壌改良をしたんです。女性樹木医の“じゅもくい女子会”で浴衣を着て診断もして。治療にかかるお金はクラウドファンディングで寄付を募りました。一つ一つ共有しながらクスノキを治していくことで、より愛着を深めてもらうことができたと思います」。2~3年でクスノキは葉を青々と茂らせ、見事に元気を取り戻しました。樹木を守ることが周りの人たちも幸せにする、さらに外に向けて発信したことで、地元の人だけでなく多くの人の力を得ることもできる。伝えることが大きな力になることを後藤さんは日々実感しています。

写真:後藤瑞穂 / 樹木医

樹と生きていくために

父親から幼い頃に言われた「人間は樹がないと生きていけないんだ。樹から酸素をもらっているんだ」という言葉が常に後藤さんの中にあります。樹が生き返ることで、環境が守られる。樹をみんなの手で助けていくことで、自然やエコロジーへの意識がより高まる。樹木医は樹の声を聞き、治療をするだけではありません。樹を取り囲む周りの人、さらにその先にいる人にも声を届けているのです。「だから樹が邪魔だから切りたい、と何も考えずに言う人は息をしちゃダメですよね」と笑います。

写真:後藤瑞穂 / 樹木医

伝える、をサポートするプロジェクター

写真:後藤瑞穂 / 樹木医

後藤さんの伝える活動の一つが講演会やセミナー。そこで欠かせないのがプロジェクターの存在。使用しているカシオXJ-A257は、A4サイズのスリムな見た目に2・3キログラムという軽さが特徴。女性でも持ち運びが楽で「この軽さと小ささには驚きました。プロジェクターは訪問先等で置いてあるものを使用するのが当たり前だと思っていましたが、これなら自分のプロジェクターとして持ち歩くことができますからね。パソコンとプロジェクターをつなぐためのケーブルがあるのか、どの程度の大きさで映す事ができるのかなど会場が変わるごとに確認をしたり、接続などで無駄な手間をとる必要もなくなりました。そして準備がもたもたすると興ざめしてしまうこともあるので、間をおかずにすぐに画面の投映ができるのはとてもいいですよね。
仕事柄、屋外から半室内というシチュエーションがあるのですが、画面が明るいので投映する場を完全に暗くしなくてもよく見えます。社内での打ち合わせもプロジェクターを使用していますが、個々のパソコン画面ではなく、一つの画面をみんなで見ることで今までと違う形で共有ができていると思います」。
熊本出身ということもあり、プロジェクターのランプに水銀を使っていないという点も着目。「プロジェクターの多くが水銀を使っているということを知らなかった。これからは環境に優しい商品を積極的に使うべきだと思っています。同じ性能の物でも、より環境に配慮したものを選択した人が例えば税金などで、考慮される世の中になると良いですね」。

写真:後藤瑞穂 / 樹木医

後藤瑞穂 / 樹木医

写真:後藤瑞穂 / 樹木医

熊本県出身。造園建設業会社でハウステンボス建設事業に携わる。平成13年に熊本県女性第1号の樹木医となり、樹木の診断や調査、公園づくりアドバイザーなど環境事業も展開。日本で最初にピカス診断を導入。拠点を東京に移し新事務所「株式会社 木風」(かぶしきがいしゃこふう)を開設。恵まれない樹を救うため、NPO法人フォーエバーツリーネットワークを立ち上げ、クラウドファンディング等で寄付を募る。樹を救うため、全国を奔走する中、セミナーや講演会でも活躍中。