埼玉県立近代美術館 様

美術館独自のユニークな映像展示に、カシオの水銀フリープロジェクターが活躍。

2019年10月15日掲載

埼玉県立近代美術館では、2019年9月14日から11月4日まで『DECODE/出来事と記録—ポスト工業化社会の美術』と題した展覧会を開催。この企画に映像展示協力としてカシオの水銀フリープロジェクターが採用されました。「もの派」と呼ばれる動向を含む1960年代末から1970年代にかけての美術潮流を、写真・映像記録で追体験するという試みに対し、展示スペース各所にてプロジェクターによる大画面投映を実施。その場に居合わせているかのような臨場感が味わえる空間構成の構築に役立てられています。

埼玉県立近代美術館(埼玉県さいたま市)

大画面投映による空間演出で、臨場感あふれる展示を実現

埼玉県立近代美術館では、1982年の開館以来、国内外の優れた美術作品を収集・展示するとともに、独自の視点で数多くの企画展を開催してきました。今回の企画展では、1960年代末から70年代まで続いた「もの派」の捉え直しを契機として、当時から現在に到るまでの美術状況をアーカイブ、写真、映像によりひもといています。

日本独自の美術動向として知られる「もの派」は、土、石、木、鉄などの物質をありのままに提示し作品とするのが特長。なかでも、1968年に発表された関根伸夫の《位相−大地》は、「もの派」の出発点となった作品として、国際的にも高く評価されています。大地に円筒形の穴を掘り、掘り出された土を円筒形に固めたこの作品は、展示期間終了後に埋め戻され姿を消したため、以降、記録写真などの資料によって語られてきました。

「当時は絵画や彫刻といった伝統的な美術作品の形式から逸脱する表現が台頭し、多くの美術家が新しい試みに挑戦していました。身体的な行為そのものが作品として成立することも多く、「作品」という物質としては永続しない多様な「表現」が、美術の分野において頻出しました。関根伸夫の《位相−大地》も、そうした傾向を示す代表的な作品です。そこで、当館では制作過程の記録写真と完成作品の写真を中心にスライドショー形式の《映像版・位相—大地》を、作者と共同制作しました(2005年)。今回の展覧会は、この《映像版・位相—大地》を起点としており、空間を構成するうえで、プロジェクターを用いた映像展示に重要な役割を託しました。」と語るのは、同館の学芸主幹であり、今回の企画を立ち上げた梅津氏です。

会場には14台のプロジェクターによる映像展示があり(作品の要素としての映像を含む)、そのうち10箇所にカシオのプロジェクターが使用されています。その中でひときわ存在感を放つのが、《映像版・位相−大地》のコーナー。高さ4メートル近い壁面を最大限に使って映し出される映像が、圧倒的な迫力で鑑賞者の前に迫ります。

「このスケール感はプロジェクターならではですね。当時の制作過程や展示風景を原寸大かそれ以上の映像で投映でき、没入感のある空間演出を実現することができました。リアルタイムに当時を知る人はもちろん、当時を知らない若い世代の人でも、映像を通して作品の世界観を追体験できると思います。作品が「出来事」になってしまうと、「記録」を残すしかないわけです。けれども、その「記録」は、「出来事」の「再現」を凌駕し、新しい「出来事」の生成を可能にするのです。そして、その可能性をひきだしてくれるのが、プロジェクターによる大型投映なのです。」(梅津氏)

「明るさも申し分なく、外光が混じる空間でも、映像は鮮明です。展示室の照明をつけたままでも十分な視認性がキープできます。同じスペースで作品やドローイング、資料などの実物展示も行うため、照明環境に左右されない投映輝度には大変満足しています。」(梅津氏)

続く展示室では、向かい合った4つの壁面に、「もの派」と関連の深い作家の映像記録や写真作品を投映。単なる資料映像の提示ではなく、四方を映像に囲まれたユニークな視覚体験スペースで、それぞれの展示を鑑賞することができます。

「複数台のプロジェクターを設置することで、ひとつの映像に対してひとつの壁面を使用する空間構成に仕上がりました。ひとつの壁面に複数の映像を投映すると、一通り見るのに時間がかかりますが、この方法なら鑑賞にストレスがかかりません。物質としての作品が、展示空間の中で一定の場所を占めるのと同じように、映像にもそれぞれの「場所」を持たせたかったのです。それは、展覧会が、展示室という空間を前提に成立する表現だからだと思います。また、4つの映像機材をカシオ製で揃えることができ、映像の質にも統一感が出せたと思っています。」(梅津氏)

学芸主幹 梅津元 氏
関根伸夫《映像版・位相−大地》展示風景
4台のプロジェクターを使用した映像コーナー

半導体光源ならではの特性が、スムーズな機材運用に貢献

梅津氏とともに今回の企画に携わった平野氏は、高輝度・大画面投映による演出上のメリットに加えて、運用面でもカシオのプロジェクターに多くのメリットがあるといいます。

「とくに役に立ったのが、オンオフの速さですね。プロジェクターを設置する際は、展示レイアウトにあわせて天井の固定場所を決め、投映する位置やサイズを細かく調整していきますが、電源をオンオフする度に待ち時間が発生することもなく、とてもスムーズにセッティングできました。」(平野氏)

実際、展示室に設置されたプロジェクターは、パーティション用のレールを利用し、垂木を組んで固定されており、方向も角度もさまざま。その設営には手間も時間もかかるのがわかります。

「水銀ランプ方式に比べて、熱を持たないのも大きな魅力です。とくに冬場、暖房による熱が天井付近にこもり、機材がオーバーヒートすることがあるのですが、カシオのプロジェクターならその心配はなさそうです。熱の発生が少ないためか、ファンも静かでいいですね。」(平野氏)

また、平野氏は、長寿命光源、低消費電力、水銀フリーといった半導体光源ならでの特長にも共感。突然のランプ切れによる展示中断がない、複数台を一度に使用してもブレーカーが落ちない、低ランニングコストでヘビーユースにやさしいなど、さまざまなメリットを挙げていただきました。

「今回の展示会は計48日間。10:00から17:30の開場時間中はずっと電源を入れたままなので、こうした信頼性は非常に心強いですね。公共施設なので、安心して長く使える点もありがたい。それでいて、水銀フリーという環境性能にも優れているのは、素晴らしいですね。」(平野氏)

今後は、活用範囲を広げてワークショップなどの教育プログラムや講演会、シンポジウム、さらには館内のインフォメーションなどにも同様のプロジェクターの使用を検討していきたいという平野氏。これからのプロジェクターとアートの関係について聞きました。

「近年、映像を取り入れる作家が多いなか、美術館でのプロジェクターの使用頻度はますます増えていくことと思います。また、当館では関根伸夫の作品をコレクション展や企画展で何度も展示していますが、同じ内容でも映像を使うことで見せ方を変え、異なるテーマ、視点から作品を提示することもできます。今後もどのような展示方法があるのか、その可能性を探っていきたいと思います。」(平野氏)

学芸主幹 平野到 氏
展示会場の設営風景
企画展のため、専用金具ではなく特製の台座を制作し
プロジェクターとDVDプレーヤーを固定設置

作品展示にふさわしい映像品質を、作家自ら高く評価

この展覧会では、関根伸夫をはじめとする「もの派」の作品・作家だけでなく、幅広い世代、多様なジャンルの作家も参加しています。そのなかから、カシオのプロジェクターを自らの展示に活用されているお二人に話を伺いました。

金村修氏は、MOMAによる「世界の注目される6人の写真家」の1人に選出されるなど、国際的に活躍されている写真家。国内では、第19回土門拳賞(2000年)、第39回伊奈信男賞(2014年)を受賞されています。本展では、プリント作品《Must Volunteer Kill》とビデオ作品《Topless Beaver Drive》《Aseptic Room Service》を出品しています。

「2018年の映像展『Shrimp Cocktail President』でカシオのプロジェクターを使用した経緯から、今回の企画展に参加するにあたり、映像展示協力という形でサポートいただくことになりました。前回は空間全体を使ったプロジェクションに挑戦しましたが、今回は壁面を使い2台のプロジェクターで映像展示を行っています。」(金村氏)

「設営の際、天井高や背後のスペースに制限がありましたが、このプロジェクターは近距離からでも大画面で投映できるので助かりました。明るさも画質も申し分なく、満足のゆく展示空間に仕上がったと思っています。」(金村氏)

小松浩子氏は、昨年第43回木村伊兵衛写真賞を受賞された、いま最も注目される女性写真家のひとり。空間全体を埋め尽くす印画紙と映像を組み合わせたインスタレーション作品で知られています。《内方浸透現象》と題した今回の展示でも独自のスタイルが継承されており、鑑賞者をイメージの向こう側へ引き込む演出がなされています。

実際、展示空間に足を踏み入れると、工事現場や資材置場を映した写真群が壁から床までを覆い尽くし、モノクロームな世界観に取り囲まれる印象を受けます。その形態は、ロール印画紙、六つ切り、オブジェなどさまざま。それに加え、ブラウン管テレビとプロジェクターによる映像展示が行われています。

「プロジェクターを使用した映像展示は何度か行っていますが、カシオのプロジェクターは今回が初めて。8ミリフィルムで撮影した映像をデジタル変換し、DVDプレーヤーで再生しています。真上から床面に映像を投映することで、鑑賞者がのぞき込むと自身の影が映り込み、見る側と見られる対象が交錯するようなイメージを表現しました。」(小松氏)

「外光が入るオープンなスペースでしたが、画面の明るさは十分でした。本体を天井に垂直に設置しても、動作や画質に問題なく、思い通りの演出ができました。」(小松氏)

金村氏、小松氏によると、個展やグループ展はもちろん、講演会やシンポジウムなど、映像を使う機会は今後も増えていくといい、その際には「ぜひカシオを使いたいですね」とのこと。これからもカシオのプロジェクターが活躍する場はますます広がりそうです。

写真家 金村修 氏
プリント作品とビデオ作品で構成した展示風景
写真家 小松浩子 氏
写真と映像を組み合わせた展示風景
プロジェクターを天井に垂直設置
映像を床面に投映した様子

記事制作協力:株式会社アドワークス

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