袋井市立笠原小学校 様

学びのなかで自己を表現するツールとして、電子黒板とプロジェクターをセットで全学級に導入。

2016年8月10日掲載

※ 記事中のインタラクティブホワイトボードのお取り扱いは終了しています。(2020年6月現在)

袋井市立笠原小学校は、140年以上の歴史を有する地域に根ざした伝統校で、平成28年度現在、全校児童133名が在籍。「ふみだそう、笠原っ子」を合い言葉に、失敗を怖れず、自ら進んで挑戦する気持ちを大切にした教育方針を打ち出している。昨年度より、袋井市の教育ICT推進事業のモデル校に選ばれ、カシオのプロジェクターおよびインタラクティブホワイトボードを導入。学びを支援し自己表現を後押しするツールとして、授業での積極的な活用に取り組んでいる。

袋井市立笠原小学校

全校導入を前提に、半導体光源のコストメリットを高く評価

国の教育振興基本計画のもと、全国の学校でICT化が着々と進められる中、静岡県袋井市でも、教材整備指針に基づくデジタル環境の構築を推進。初期段階として、電子黒板機能付きのプロジェクターと実物投映用の書画カメラを市内の全小中学校に配備するべく、平成26年度より計画が進められてきた。

その中で、ICT推進のモデル校に選出されたのが笠原小学校。平成27年度にカシオのプロジェクターXJ-UT310WNとインタラクティブホワイトボードYN-W72D-Cを採用し、各教室に設置。デジタル機器の活用を日々の授業の中で実践している。導入の経緯について、袋井市教育委員会 学校教育課 主幹兼指導主事の太田欽哉氏に話を聞いた。

「電子黒板用のプロジェクターについては、様々な機種を検証しましたが、決め手となったのは光源寿命。一般的な水銀ランプが約3,000~5,000時間なのに対し、カシオの半導体光源は約20,000時間。プロジェクターの使用を1日4時間、年間1,000時間で試算すると、水銀ランプの場合、3~5年に1回の交換が必要になります。市内の全小中学校、全学級に導入することを考えると、その費用は莫大なものになります。長く使うことが前提なので、初期費用だけでなく、運用管理まで含めたトータルコストを重視し、カシオのプロジェクターを選びました。」(太田氏)

なお、教室でプロジェクターを使用する場合、スペースや使い勝手を考えると、天吊り設置するのがベターだが、今回の導入に際しては、部品代や工事費がネックとなり見送ることとなった。そのかわりに導入台数を増やし、全教室への設置を優先することにしたという。

「すべての児童に同じ学びの環境を提供するのが目的なので、設備が整った教室とそうでない教室があるのは望ましくありません。多少の利便性に目をつぶってでも、全体として必要な台数を確保したかったため、財政面でのやりくりには苦労しましたが、おかげで、ここ笠原小学校では、1~6年生の各教室だけでなく、特別支援学級にもICT機器を導入することができました。」(太田氏)

「とはいえ、ここまでは、いわばスタートライン。重要なのは今後、教員ひとりひとりがICT機器に対する理解を深め、授業にどう活かしていくかだと思います。若い世代の先生にとっては、教材の見せ方や児童の参加方法など、工夫次第で授業の幅を広げるのに役立つでしょう。また、授業力の高いベテランの先生にとっては、まさに鬼に金棒となる可能性を秘めています。今まで培ってきた授業スタイルに磨きがかかり、学習効果をより高めることができるのではないでしょうか。」(太田氏)

導入することより、活用することに意味があると語る太田氏の言葉には、現場を知る人間ならではの学校教育に対する熱意が感じられた。さらに、校長の磯部安氏も、次のように言葉を添える。

「一昔前までは、先生が手作りで教材を用意したものですが、今はICT機器を活用するのが当たり前になりつつあります。機器の扱いに関しては、児童の方が慣れている感があるくらいです。今後、児童1人に1台ずつタブレットの導入が計画されている中、教員の意識改革も重要になってきますね。しかし、教育の本質は、今も昔も変わりません。機器に使われるのではなく、使いこなしていくことが大切だということを念頭に、研修などを通じて、ICT機器のよりよい活用法を模索していかなくてはならないと考えています。」(磯部氏)

袋井市教育委員会 学校教育課 主幹 兼 指導主事 太田欽哉氏
袋井市立笠原小学校 校長 磯部安氏

電子黒板の活用で、毎日の授業にさらなる創意工夫を

続いて、カシオのプロジェクターおよびインタラクティブホワイトボードの活用法について、教務主任の嶋田修氏に話を聞いた。

「国語、算数、理科、社会に加え、音楽、家庭、図画工作などの教科で、ほぼ毎時間のように使用しています。各教室に備え付けられているので、使いたいときにすぐ使えるのが一番のメリットですね。デジタルコンテンツや実物教材などを投映することで、今まで言葉で説明していたものを視覚的に伝えることができ、児童の理解度を深めるのに役立っています。」(嶋田氏)

「特に、書画カメラとの連携は、裁縫の手順や楽器の指の動き、書写の筆運び、コンパスや定規の使い方など、手元を大きく映すのに最適ですね。後ろの席の児童にも見やすく、伝えたいことがダイレクトに伝わります。また、全員に発表の場を与えるのにも重宝します。ノートや作品を映して、クラスみんなで考えを共有したり、比較したりすることで、自分の考えを整理することができます。子どもひとりひとりの参加意識が高まり、クラスにも一体感が生まれます。」(嶋田氏)

設置には、スクリーンとセットで使えるキャスター付きの専用台を使用。嶋田氏自ら図面を描き、業者に製作を依頼したオリジナル品で、コロコロ電子黒板と呼んでいるという。また、使用していないときは、プロジェクターにカバーをかける。このカバーも、卒業生の手作りだ。

「スクリーンを黒板に設置しないのは、板書と併用するため。ICT機器だけに頼ると、授業の進行が単調になりかねません。投映中は注意深く見ますが、消してしまうと頭に残らないこともあります。そこで、黒板に問題を提示し、画面を使って考え方のプロセスを説明するなど、見せ方を工夫するよう心がけています。」(嶋田氏)

子どもの集中力をキープするため、ここぞというタイミングで投映する。その際、役に立つのがクイックON&OFF機能だ。電源ONから最短5秒で投映できるため、見せたい瞬間を逃さない。電源OFFからのリスタートも早く、点灯のたびに待ち時間が発生し、授業が停滞することもない。

「授業を進める中で、急に見せたいものが出てきても、時間を気にせずすぐに投映できます。予定外のことにも臨機応変に対応できるので、プロジェクターを使う機会は格段に増えました。授業参観や公開授業など、特別の場だけでなく、毎日当たり前のように活用しており、いまでは授業に欠かせない存在になりつつあります。」(嶋田氏)

導入から約1年。笠原小学校では、電子黒板の使い方に慣れてきた先生も多く、活用のアイデアもどんどん生まれているという。パワーポイントでアニメーション付きの教材を作成し、タッチペンを使って画面を切り替えたり、デジタルカメラで撮影した板書を投映し、前回の授業をおさらいしたりと、嶋田氏の口からは活用例が次々と挙げられた。

「ICT機器の導入で創意工夫の幅が広がれば、児童だけでなく、先生の意欲も高まります。積極的に使うことで、新たな使い方に気付き、さらなるアイデアにつながることもあります。しかし、デジタル機器はサポート役であり、主役はあくまで児童であり先生。授業のねらいに沿って何のために使うのか、どの場面で使うのかをよく考え、バランスよく使うことが大切だと思います。そうすることで、教育効果もますます高まっていくのではないかと考えております。」(嶋田氏)

袋井市立笠原小学校 教務主任 嶋田修氏
専用台に設置されたXJ-UT310WN
特製カバーは卒業生の手作り
5年生の授業風景と担任の加藤麻衣子先生
児童による発表の様子

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