関西不二サッシ 様

サッシ製品の生産・出荷・棚卸業務をハンディターミナル活用で大幅に効率化。生産性向上、誤出荷抑制、ペーパーレスを実現。

2020年9月17日掲載

関西不二サッシ

サッシなどの金属製建材メーカー、不二サッシ(株)・大阪工場を運営する100%子会社の関西不二サッシ(株)は、ハンディターミナル(カシオ計算機製)を活用した情報管理システムを構築し、製品の生産・出荷・棚卸業務の大幅な効率化に成功している。同社はビルサッシ事業と住宅サッシ事業の2事業体制で展開しており、この情報管理システムは住宅サッシ事業の方で導入したものだ。

原材料の溶解から鋳造、押出、電解、加工、組立、出荷まで最新の一貫生産システムを保有する同社の製品は高品質との定評がある。ただ、多くの部材で構成される住宅サッシ製品はアイテムも多く、製品ごとに組み合わせる部材の選択判断を以前のように作業担当者に頼る仕組みでは、組み合わせを誤った不適合製品生産の可能性があり、生産性向上にも限界があることに加え、出荷管理を誤れば納品先のオーダーと異なる誤出荷のリスクも残っていた。この課題克服のため、ハンディターミナルを活用した情報管理システム構築に着手したのが一昨年9月。今年4月にはこのシステム展開を、棚卸情報や出荷指示書のハンディターミナル画面表示にまで広げ、すでに成果を生み出しているという。(編集部)


QRコードによる管理システムで作業担当者の判断作業が不要に

同社住宅サッシ事業では、3年ほど前から新製品が増加し、その生産加工工程における作業の効率化が課題に浮上していた。生産効率化を進めるうえでその障害と映ったのが作業における作業担当者の選別判断。元来アイテム数が多く、また多数の部材で構成される住宅サッシ製品だが、相次ぐ新製品投入でさらに取扱部材数が増えたことから、作業担当者の選別判断・作業は煩雑とならざるを得ず、生産性低下を招きかねない状況になっていた。選別判断と作業が煩雑さを増せば、誤った部材を含んだ不適合製品を生産するリスクが増すのは当然のことで、同社としては、生産性・品質の両面での課題に対処する必要が生じた。

この課題に直面した同社は「生産性向上と品質管理の両面から、作業担当者が適切な部材を選ぶような判断・作業を可能な限り減らしたいと考え、生産設備の改善に着手した」(製造部課長・畠山稔氏)という。具体的には「部材ごとに作業指示書番号や納品先、切断寸法、形番、納期などを表記したQRコードラベルを発行し、貼付する仕組みを新製品から導入し始めた」(製造部課長/生産技術チーム長・山本靖雄氏)。原材料加工から組立までの工程でラベルのQRコードをハンディターミナルでスキャンチェックすることにより、部材選択と作業内容の正しさが確認できるようになったため、スムーズで間違いのない組立作業が実現できたという(写真①②)。

畠山 稔氏(関西不二サッシ)
▲畠山 稔氏(関西不二サッシ)
山本靖雄氏(関西不二サッシ)
▲山本靖雄氏(関西不二サッシ)
①QRコードラベルを貼付した部材
▲①QRコードラベルを貼付した部材
②ハンディターミナルでQRコードを読み取り,部材選択と作業内容の正しさを確認
▲②ハンディターミナルでQRコードを読み取り,部材選択と作業内容の正しさを確認

生産・出荷を通貫するシステム、作業の現場完了で生産性向上

この取り組みがひと通り完結し、結果が得られたことを受け、同社はさらに「生産工程管理に導入した情報管理システムを、作業担当者の判断を要している別の用途で採用できないかと考え、着目したのが最終工程となる出荷管理だった」(畠山氏)という。そこで出荷工程では、製品に貼付されたQRコードをハンディターミナルでスキャニングし、製品に間違いがなければ、モバイルラベルプリンタより出荷ラベルが発行されるシステムを構築。生産工程で部材に漏れがある場合や、部材がオーダーと異なる場合には、その製品のQRコードをスキャニングしても、出荷ラベルは発行されないため、誤出荷を防止できる仕組みだ(写真③④)。

この仕組みを完成させる前は、工場内の事務所で出荷ラベルを発行しており、製品が生産順に並べられている最終工程に供給し、そこで製品とラベルを確認しながら貼付していた。サッシは枠と障子の組み合わせで構成されており、枠だけでも4~5個の部材が必要。ガラスをはめ込んだ障子には、1枚当たり8~16個もの部材が使われている。それぞれの組み合わせが異なったり、抜けていたり、色違いなどがあれば、納品先のオーダーと異なる製品を発送してしまう。以前は、作業担当者が出荷前に紙の出荷指示書と製品を照合して適合性を判断した後に、出荷ラベルを発行して貼付していたため、作業担当者の判断ミスによる誤出荷のリスクがあったわけだ。

生産から出荷までを通貫する情報管理システムが構築されたことで、生産・出荷における作業担当者の判断は不要となり、判断ミスを起因とする不適合製品の生産、納品先のオーダーと異なる製品の誤出荷リスクは極めて小さくなった。加えてラベル発行も現場で行えるようになったため、事務所から現場までラベルを供給する作業もなくなり、この部分でも生産性は大幅に向上した。

③最終点検後に出荷ラベルを発行
▲③最終点検後に出荷ラベルを発行
④出荷ラベルが添付された製品
▲④出荷ラベルが添付された製品

浜田、日伝、カシオ計算機、アイエムシステムがシステム構築をサポート

同社が生産・出荷工程における作業担当者の判断作業を極力なくしたいとの相談を持ち掛けたのが設備・機器商社の(株)浜田。浜田では「情報管理システムの構築が不可欠と判断し、システム構築で実績のあるパートナー候補を挙げ、絞り込んだ」(主任・山田智樹氏)という。その結果、「情報管理システムを構築のほか、端末機器やラベルなどの提供も全て総合して対応できる」(課長・樫本泰史氏)との判断から(株)日伝に白羽の矢を立てた。

指名を受けた日伝は、関西不二サッシの生産・出荷工程の現状を踏まえ「最適な情報管理システムをデザインし、端末機器の選定、供給するラベルなどのコーディネートを進めた」(松下治氏)。その中でハンディターミナルに選ばれたのがカシオ計算機(株)。「カシオ計算機さんのハンディターミナルは汎用性が高く、必要十分な機能が標準搭載されているため、現場で使いやすいと定評がある。製造・物流分野での普及も進んでおり、信頼性が高い」(松下氏)との結論に達したという。

カシオ計算機もこれに応え、関西不二サッシの要望を踏まえ最適なハンディターミナルを選定して提案を行った。

また、システム構築を進めるうえで、カシオ計算機のハンディターミナルに合わせたソフトとデータベースを開発したのが(株)アイエムシステム。アイエムシステムでは、情報管理システムの構築について「情報端末のハンディターミナルに合わせたソフトが安定稼働に欠かせない」(社長・三木康之氏)とし、データベースについても「関西不二サッシ様のご要望を踏まえ、使いやすく、今後の展開にも対応できる形で開発を進めた」(高木俊輔氏)としている。

山田智樹氏(浜田)
▲山田智樹氏(浜田)
樫本泰史氏(浜田)
▲樫本泰史氏(浜田)
松下 治氏(日伝)
▲松下 治氏(日伝)
三木康之氏(アイエムシステム)
▲三木康之氏(アイエムシステム)
高木俊輔氏(アイエムシステム)
▲高木俊輔氏(アイエムシステム)

棚卸情報と出荷指示書のハンディ画面表示も実現

その後、関西不二サッシでは、生産・出荷管理の情報管理システム化で生産・出荷現場の生産性向上が進み、誤出荷リスクの極小化などの効果が得られたことから、「導入したハード・ソフトをさらに有効に活用したい」(畠山氏)との考えが浮上。最初のシステム化の取り組みで部材・製品のデータベースサーバを構築していたため、このデータベースサーバが活かせるとの思いもあり、製品の棚卸情報や金具の金具指示書のハンディターミナル画面表示に踏み出すことを決めた。

毎月行っている棚卸作業の時間が長く、作業担当者の負荷が大きいため、その作業時間を短縮すること、また、生産・出荷工程での作業を示めす金具指示書を部材ごとに出力しており、「1日当たり約2,400枚」(山本氏)もの紙を消費していたため、ペーパーレス化を図ることが新たな取り組みの理由だった。出荷指示書については、事務所で出力したものを部材ごとに仕分けし、それを各現場に運ぶという作業も付きまとっており、作業効率面での課題もあったという。

この案件についても、浜田、日伝、カシオ計算機、アイエムシステムの各社が協力し、スピード感をもってシステムの完成に取り組んだ。具体的には、データベースサーバに棚卸情報や金具指示書のマスタデータを取り込み、ハンディターミナルと連携するシステムを構築。それぞれの情報を画面表示できるものとした(写真⑤⑥)。出荷指示書については、金具それぞれに付されたQRコード(写真⑦⑧)をスキャンすると、出荷指示書QRコードが発行される(写真⑨)ため、各工程でこれをスキャニングすればその金具の指示書が画面表示される。棚卸作業(実棚管理)についても画面に表示された情報に基づき、現物に添付されたコードをスキャンするだけで作業が完了する仕組みだ。

棚卸情報と金具指示書のハンディターミナルへの画面表示システムは4月から稼働しており、いずれもすでにその導入効果が出ているという。特に棚卸作業では、現場作業時間の半分程度に短縮すること、また、現場で複写式伝票に手書きした情報を事務所に持ち帰ってパソコンにデータ入力する作業をゼロにすることが最終目標で、現在までに現場作業時間を4割程度短縮したほか、事務所でのデータ打ち込み作業も9割程度削減できたとしている。

同社は今後のシステム展開について「現段階で金具については金具指示書を画面表示することができた。これをサッシ本体にも展開したい」(畠山氏)という。サッシ本体の金具指示書については、現在も事務所で出力し、製作順に各ラインに供給する体制になっているからだ。これが実現できれば、事務所と現場の往復作業がなくなることはもちろん、ペーパーレス化が大幅に進展する見込みで、同社のさらなる取り組みが注目される。

⑤表示する出荷指示書を選択する画面
▲⑤表示する出荷指示書を選択する画面
⑥棚卸メニューを表示した画面
▲⑥棚卸メニューを表示した画面
⑦多数の金具がセットされたピッキング棚
▲⑦多数の金具がセットされたピッキング棚
⑧金具ごとに付されたQRコードをスキャン
▲⑧金具ごとに付されたQRコードをスキャン
⑨出荷指示書QRコードの発行画面
▲⑨出荷指示書QRコードの発行画面

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