小田急電鉄株式会社 様

V-T500を活用した情報システムの構築により、サービス向上と業務効率化を同時に実現。

2017年12月7日掲載

▲小田急電鉄株式会社 特急ロマンスカー VSE(50000形)

2017年4月、小田急線開業90年を迎えた小田急電鉄株式会社。同社では、さらなる顧客満足度向上のため、東京オリンピック/パラリンピックが開催される2020年に向けた取り組みを全社的に推進。鉄道業務の現場においても、業務システムと連携した専用タブレットの利用環境を構築し、列車乗務員や駅係員によるリアルタイムかつシームレスな情報活用を実現。列車運行状況の提供、特急ロマンスカーの座席予約の照会、運賃や駅周辺情報の案内、さらには翻訳対応など、さまざまな業務に役立てている。

情報共有の基盤にタブレットを活用。顧客サービスの向上、社内業務の効率化に貢献

世界一の乗降客数を誇る新宿駅を起点に、東京都・神奈川県の各都市を結ぶ小田急電鉄。現在、3路線70駅で、1日の旅客数は約205万人にのぼる。通勤・通学路線として沿線エリアの暮らしを支える一方、新宿と箱根、江ノ島を結ぶ特急ロマンスカーなど、観光路線としての人気も高く、訪日外国人の利用も増加傾向にあるという。

そうしたなか、同社では、時代に即した交通インフラの整備、急増するインバウンド需要など、多様化するニーズに応えるべく、東京オリンピック/パラリンピックが開催される2020年を目途に、グループ全社をあげて大規模な事業改革に着手。なかでも、列車運行や駅務などの業務においては、迅速かつ正確な情報活用を可能とするIT環境を新たに構築。専用端末としてタブレットを列車乗務員や駅係員に配付し、さらなる顧客サービスの向上と社内業務の効率化に力を入れている。システム導入について、IT推進部の蘆田氏、木村氏に話を聞いた。

「列車乗務員や駅係員は、日々さまざまな情報にアクセスします。列車運行状況、特急ロマンスカーの座席予約状況などのリアルタイムな情報から、乗換・運賃検索、駅および周辺施設案内といったお客さま向けの情報まで、その種類は実に多種多彩。しかし、それらを利用する手段はというと、電話・無線での口頭伝達、印刷物での確認、専用端末での照会など、用途ごとにバラバラなのが実情でした。そこで、今回のプロジェクトでは、多様な情報をタブレット1台で利用できるシステムを構築。より質の高いサービスの提供を実現するとともに、業務効率の向上を目指しました。」(蘆田氏)

「具体的には、携帯用座席確認システム、列車運行情報表示システム、運賃検索システムといった基幹業務システムとの連携、施設情報や観光情報へのアクセス、駅係員の規則や規程集など各種ドキュメントの電子化、部署内での画像やメッセージの共有化、口語翻訳システムや筆談機能の実装などを目標にシステム開発を行いました。」(木村氏)

「これにより、列車乗務員や駅係員は、手持ちの端末から各種情報の取得が可能となります。たとえば、ダイヤ乱れが生じた場合でも、画面上で列車の走行位置をモニタリングし、即座にお客さまへ到着予定時刻をご案内できます。また、同じ端末で特急ロマンスカーの座席予約状況を確認することもできます。お客さまへのご案内以外でも、電子マニュアルの利用によりペーパーレス化が図れるとともに、記載内容に変更が生じた際も元データの更新だけで対応できます。情報共有だけでなく情報管理という面でも、本システム導入によるメリットは大きいといえるでしょう。」(蘆田氏)

そして、このシステムの中核を担う端末に採用されたのが、カシオの企業向けタブレット「V-T500」だ。最大の特長は、そのタフネス性能。落下強度1.0m、JIS防沫形(IP54)、動作温度-20~50℃を実現し、車両内からホーム、コンコースまで、あらゆる環境で使用できる。また、電池交換式のため、バッテリー残量を気にせず長時間稼働が可能。予備バッテリーの携行で、連続乗務にも対応できることなどが高く評価された。

また、通信はLTEおよび3Gに対応。カメラ機能も搭載し、万一事故が発生した際、現場での情報収集、伝達、共有がスムーズに行える。そして、設備保守や添乗指導などのシーンでも、作業結果をその場で入力しデータ転送することが可能。その後の報告書作成・管理の時短化にも役立つという。

さらに、一般のタブレットとは異なる業務用ならではの特長として、端末の継続供給に対応し長期保守が可能な点にも着目。Android OSのバージョンを固定し、バージョンアップの影響を受けることなく長いライフサイクルで端末の運用ができることもハードウェア選定の決め手になったと蘆田氏は語る。

「採用決定後すぐに実機テストを行い、実際の使用環境で耐久性や携帯性、操作性、視認性などを数ヶ月かけ検証しました。屋外でも雨やホコリを気にせず通常通りの業務が行えることを確認したうえで、本格導入を進めました。画面が大きくて見やすい、タッチ操作の反応がいい、小さい文字も拡大して見られるなど、職員の評判も上々。さすが業務用に開発された端末だけあり、ハードウェアとしての性能には満足しています。」(蘆田氏)

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▲IT推進部 課長代理 蘆田満宏 氏
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▲IT推進部 木村幹男 氏
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▲VSE(50000形)特急ロマンスカー担当車掌

ハードウェアのパフォーマンスを最大化するソリューションを提案

端末に求められるのは、耐環境性や搭載機能などのハード性能だけではない。紛失や盗難による情報漏洩の防止、アプリやマスターデータの更新、機器トラブルの対応など、600台を超える端末を適切に管理するための仕組みも必要となる。そこで、小田急電鉄では、V-T500の採用にあわせて、認証システムやMDM(モバイル端末管理)システムも導入。セキュリティやメンテナンスの面でも万全の対策がとられた。

認証システムには、社員証を利用したICカード認証方式を採用。初回ログイン時のみIDとパスワードを入力し、以降24時間のみカード認証を有効とするなど、より厳重なセキュリティ対策が講じられている。開発にあたっては、既存のActive Directoryを利用。低コストかつ小工数でのシステム構築を実現した。

「カード認証の利点は、なんといってもそのスピード。カードをかざすだけでログインでき、認証後はユーザー情報をもとに業務権限に応じたポータルメニューを表示するため、欲しい情報がすぐに手に入ります。スリープのたびにパスワードを入力する手間も省けるので、ストレスなく端末の利用ができるうえ、お客さまからの問い合わせにも迅速に対応できます。」(木村氏)

一方で、MDMシステムには、世界中で採用実績のある「MobiControl ® 」を採用。端末のセキュリティ対策から管理・運用・保守までを担うシステムとして、V-T500向けの機能や仕様を専用開発した。セキュリティ機能として、遠隔操作による端末のロックやデータの消去などが行えるほか、端末管理機能として、利用制限設定、ログ収集、レポート作成、リモートデスクトップ、アプリ配信などの機能を備える。

「社外秘を含む多種多様な情報がタブレット1台に集約しているため、セキュリティ対策は水際までしっかりと行う必要があります。また、特定の場所で使用するPCと違い、さまざまな現場に点在する端末を一括管理するうえでもこのツールは有効。マルチOSに対応したインターフェイスなど、システム管理者の使い勝手にまで気配りが行き届いており、V-T500のパフォーマンスを最大化するのに最適なソリューションだと思います。」(木村氏)

今回のシステム開発にあたっては、SIerである株式会社大塚商会の提案のもと、ハードウェアおよび認証システムの開発にカシオ、MDMソリューションにペネトレイト・オブ・リミット株式会社が参画。豊富な実績を持つ各社の連携のもと、さまざまな問題解決にあたり、検討段階から、システム構築、管理運用まで、スムーズかつ確実に導入計画が推進できたと、蘆田氏、木村氏はそのプロセスを振り返る。

「ITやシステムという言葉には無機質なイメージがありますが、つくるのも人、使うのも人。そこには必ず人が介在します。今回の開発では、プロジェクトメンバーが密に連携し、それぞれプロの目線から高度な提案をしていただきました。ひとつひとつの要望に対して迅速かつ正確な回答をいただくことで、安心してシステム開発を進めることができたと思っています。」(蘆田氏)

V-T500は、2015年、2016年の2回にわたり、運転車両部、旅客営業部を中心に順次導入が進められた。また、2017年9月には、各種設備の保守点検を行う電気部に新たに配備され、現在計612台が運用されている。今後は、より機動性の高いスマートフォンサイズの端末導入も視野に入れ、さらなるシステムの充実に取り組んでいきたいとのこと。東京オリンピック/パラリンピックが開催される2020年、またその先にある開業100周年という節目に向けて、モバイルデバイスによるIT環境を基盤としたサービス向上と業務効率化がますます加速していく。

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▲特急ロマンスカーでのV-T500使用イメージ
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▲一般乗務員用のポータルメニュー
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▲伝統的車両 特急ロマンスカー LSE(7000形)
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▲開業90周年を迎えた小田急電鉄のシンボル 特急ロマンスカーを一堂に

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